兼本先生 フリースクールへの思いを語る

自分で勉強する子を育てる塾

  • 兼本先生

    ― まず初めに、創伸館とはどんな塾なのでしょうか?


    そうですね。なかなかうまい表現が見つかりませんが、友達同士が集まって、カフェか何かで勉強しているような感じとでも言えばいいでしょうか。
    小さな部屋ですが、勉強道具を広げられるように、広めのテーブルを置き、飲み物などを飲んでもかまわないようにしています。
    そこで基本は自習し、わからないところがあれば、先生に質問します。

    ― 一斉授業などはないのですね。


    はい。だから、塾というより、自分で勉強するスペースですね。
    自分で勉強して自分で質問するというやり方が、子供たちにとって、一番勉強している実感を持てると思うのです。
    ここでは、先生と生徒が対等というのでしょうか、一方向でないやりとりができています。
    また、知っている子が知らない子に教えたり、上級性が下の子に教えたりというようなこともあります。

    ― 進学塾ではないということですが?


    そうですね。僕のところでは、進学実績の張り出しもしていません。
    進学のための塾では、どうしても上の子中心になってしまい、はじかれる子が出てきてしまいますので。
    そうすると、学校からもはじかれ、塾からもはじかれる子ができることになる。
    僕のところでは、来たいという子はすべて受け入れますし、逆に、去る子は追いません。

    ― 保護者から、ガンガン勉強させてほしいと言われないのですか?(笑)


    うちの保護者の方々には、密に連絡を取っていろいろな話をし、納得してもらっています。
    今だけを見れば、進学塾でテクニックを教えてもらうこともいいと思います。
    でも、勝負は社会に出てからです。
    そんな長いスパンで見れば、自分で考えることが大事なのです。
    自分で勉強する → わからなければ調べる → 答えがついていればそれを見る → それでもわからなかったら質問する → また自分で勉強する
    こんなふうにして、行き詰ったところでアドバイスを受けることで、こうやれば前に進めるんだとか、道が開けるんだとかいうことを、自分で実感してほしいのです。
    時間がかかっても、自分で考えて、納得して、立てた目標に向かって頑張って勉強する。
    結果は何点であろうと、すべて「よく頑張ったな!」です(笑)

小さい自由な学校を

― なんだか、全校で1クラスしかない、山間部なんかの学校みたいなイメージですね(笑)


あ、それはうまい表現ですね(笑)
そうです、本当にそんな感じなんですよ。
僕のことも、子供たちからしたら「年のいった友だち」という感じみたいですし(笑)
僕自身は尼崎の出身ですが、母親から昔住んでいた三重の田舎の学校のことをずっと聞かされてきたので、田舎の学校に強い憧れを持っていたのです。

― と言いますと、豊かな自然があるといった話でしょうか?


それもあるのですが、僕の勝手なイメージで、田舎の学校では、思いつきで、「あー、外行こうぜ!」みたいな、そんなことができると思っていたのですね(笑)
僕は、小学校の時から、ずっと教員志望で、大学でも教職を目指していました。
しかし、先に教育実習に行った先輩から、「学校って、お前が思ってるようなことは全然できないぞ」って聞かされて、そこから思い悩んでしまって。
それで、子供たちの水泳のコーチをしながら、8年かかって大学を卒業しましたが、結局教員にはならなかったし、教員免許も取りませんでした。

― その間に、家庭教師や塾でのアルバイトをされたそうですが?


はい。
家庭教師は飯だけ食わせてもらう条件で、高2の子と教科書をずうっとやっていったんです(笑)
本当に、一緒に勉強するという感じで。で、わからないと、前のページにさかのぼって調べる。
それを繰り返していたら、中間テストは1ケタだったのが、期末テストでは90点になって。
その時、教科書というものは、こんなふうに使うものなのだということを知りましたし、基礎の大切さということを思いました。
だから今も、基礎さえしっかりしていれば、後はどうしてでも生きていけると思って、基礎をやらせています。
でも塾の方は、数か月でクビになってしまいました(笑)
子供たちと話をしながら、親しくなって楽しく勉強させようとする僕のやりかたが、塾の雰囲気に合わなかったみたいです。
その経験から、どこかの塾に所属すると、そこのやり方に合わせないといけなくなるのだなあと思いました。

― だから、ご自分で塾をなさりたいと思われたのですね。


そうですね。自分のイメージの、全学年混じった小さな学校を作りたかった。

― 創伸館も最初は、もっとすごく小さなスペースでなさっていたそうですね?


そうなんですよ。
前に借りていた場所が使えなくなって、塾を閉めようとした時に、保護者の方がぜひ続けてほしいとおっしゃって、ご自分の会社の事務所だったこの部屋のスペースを、半分貸してくださったんですよ。つい立てで仕切ってね。
だから、最初は、隣で仕事されている方にものすごく気を遣いました。
静かにさせるのに、叱ったこともあります。
でも今では、子供たちははじめは少しガヤガヤしていても、僕が本を読み始めると、みんな黙って勉強を始めるんですよ。もう勉強の習慣がついているんです。
だから、気がつくと、けっこう集中できている。
そしたら僕が、息抜きに冗談を言って、ちょっと緩める(笑)


環境になじめない子担当

― 大学の卒業後は?


けっこう長い間、スイミングスクールで水泳のコーチをしていました。
もう子供たちがかわいくて、楽しくて仕方なくてね。
で、子供たちに年賀状を出すことにしたんですよ。
でも、そのために住所を教えてくださいと所長に言うと、その頃はまだ個人情報保護とかいう考えはなかったんですが、勝手に教えるわけにはいかないと言われてダメで。
だから僕は、一人ひとり子供たちに聞いて送りました。
そしたらすごく好評で、翌年からはスクールをあげて、全生徒に年賀状を出すことになりました(笑)
で、もう来なくなった子にもずっと出していると、とうとう2000枚も書くことになって。
当時はプリントごっこで一枚一枚印刷してね、宛名だって手書きでしたからね。
全然終らなくて(笑)

― それはまたすごいお話ですね。今でも教えた子たちとのつながりがあるのですか?


そうですね。突然Facebookで僕を見つけて、連絡くれたりもしますよ。
創伸館でも卒業生が突然やってきて、今の塾生たちに混じって本を読んでたりしてね(笑)
僕はその後、保育園で指導員をしたのですが、その時受け持った子が、今うちの塾に2人来ていますし。

  

― いいですね。ずっとどこかで信頼の輪がつながっていると言いますか・・・。


そう言われれば、塾生たちも今まではみんな、保護者の方の口コミで入ってきていました。
たくさんの方に支えられて、みんなとつながっていることで、創伸館があるのだと思っています。 
 

― 特に、フリースクールをと思われたきっかけは、何だったのでしょうか?


プールのコーチをしていた時に、プールの知り合いから「フリースクール」というものの存在を聞かされたことです。
その時、何か、今までやってみたいと思っていたことと、スッとつながったような気がしました。
でも、いきなりはできないので、いろいろな仕事をやりましたよ。

― 元々、困っている子たちのために、何かがしたいというお気持ちがあったそうですね?


そうなんです。
僕は、プールのコーチの後に、保育園でも働いたことがあるんですが、なぜかいつも、泣いている子が寄ってくるんですよね。
プールでも、保育園でも、泣いている子担当というか、環境になじめない子担当っていうか。

― それはすごい。何か先生に、そういう子を引き寄せるものがあるのですね。


うーん、何なんでしょうねえ。
こんなに怖そうな見た目なのにね(笑)
だから、ずっとHPに写真も載せてなかったんですよ。写真見たら、誰も来ないんじゃないかと思って(笑) まあ、今は腹をくくって、顔も名前ももうどこにでも出す覚悟ですが(笑)


アナザールートの居場所を

― フリースクールでは、どんなことをしていくおつもりですか?


勉強だけでなく、生活面も見ていくために、時間割を一応設定しています。
基本、午前中は普通の勉強、午後からはいろいろなことに挑戦してもらう時間にしたいと思っています。
ですが、僕のイメージとしては、昼間に来られる創伸館塾です。
創伸館では、本を読んでいる子もいるし、小説を書いている子もいます。
絵を描く子もいるし、パズルを解く子もいる。
ただ、フリースクールでは、塾よりも悩みを抱えてくる子が多いはずなので、「頑張ろうぜ!一緒に」というスタンスで、居場所を作れたらと思っています。

― 適応指導教室なんかだと、学校に戻すことが目的ですが?


僕は、子供たちが社会に出ていくためのルートには、一般的な学校教育のルートとは違う、アナザールート(別の道)があると思っています。
大事なことは、社会を広く見られる大人、社会に貢献できる人間に育っていくことです。
そのためには、まず自分のやりたいことを見つけることです。夢とか、目標とか。
その目的の中に、もし、学校に戻りたいということがあるなら、学校に戻るためにどうすればいいかを一緒に考え、全力でサポートする。
学校には、どのタイミングで戻ったって構わないのです。
もっと言えば、戻らなくても構わない。
学校のルートだけをただ1つのルートだと、思い詰める必要はありません。
僕は、学校という道について、「この道しかないと誰が決めてん!」と思うのです。
その子にとっての進み方は、社会が決めたルートでなくてもいいんです。
どうしても学校が合わないなら、フリースクールに来てもいいと、僕は思います。

― しかし、合わないからと言って他に行くことを、「逃げ」だという人もいますよね?


合わない道を外れて他に行くことは、逃げではありません。
僕は、むしろみんなが学校に依存しすぎなのではないかと思っているのですよ。
学校にさえ行っておけば何とかなる、そんなふうに思っている人が多いのではないでしょうか。
学校に行かないことは、むしろはっきりとした「意思表示」なのですよ。
今の日本の国では、何かをしないことは変なこと、イコール悪いことになっています。そう思われも<します。
でも、外れていくことにも勇気がいる。学校に行かないことには、勇気がいるのです。
それは世間一般とは違う勇気かもしれないですが、僕はそれを応援したいのです。


ただ学校に行かないだけの子

― では、先生にとって、ずばり、不登校の子はどういう子ですか。


ただ、「学校に行かないだけの子」ですね。
だから何やねんということもない。

― 学校に、「行けない」ではなく、「行かない」なのですね。


そうです。
10代の子たちが、学校に行かないぐらいで、閉じこもって終わってしまうのは、あまりにもったいない。
それなら、うちに来て、楽しもうぜ、という気持ちなのです。

― 不登校に苦しんでいる子供たちに、何かメッセージを。


「学校に行ってないやつ、来いや!」(笑)
もっと言えば、「学校に行ってるやつも、来いや!」ですね(笑)


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